
海神神社・和多都見神社
わたつみじんじゃ・わたづみじんじゃ
Watatsumi-jinja Shrine & Watazumi-jinja Shrine
海神神社と和多都見神社に関する予備知識
海神神社と和多都見神社はいずれも長崎県の対馬に鎮座する神社です。対馬国一宮は前者とされていますが諸説あります。
海神神社と和多都見神社の所在地
海神神社
和多都見神社
海神神社と和多都見神社の関係
どちらも海の神様
ワタツミだとかワタヅミは海の神様を指します。ワダツミと言ったりもしますね。「ワタ」とか「ワダ」は海のことで、「ツ」は助詞の「の」に該当し、「ミ」は神のことです。
あくまで個人的な解釈ですが、「ワタ」はもともと水を指していたものが転じて海や雲を指すようになったのかなと…
それは兎も角、漢字表記に関しては「海神」が意味を当てたものであるのに対し、「和多都美」は読みを当てたもの(いわゆる万葉仮名)ですね。
読み方を区別しているけれども
いちおう、海神神社はワタツミ、和多都美神社はワタヅミと読み方が区別されています。しかし、これは近代以降に設定された建前的なものだと思われます。なぜなら、古代において清音と濁音の明示的な区別は存在しなかった為です。
ちなみに、地元の方は和多都美神社のことを「わたつみじんじゃ」、海神神社を「木坂神社」と呼んでおられました。また、観光ガイドでは海神神社を「木坂海神神社」と表記しているケースが多いです。
対馬国一宮は海神神社のほう
近代以降の研究により、平安時代の『延喜式』に記される「對馬国一宮和多都美神社」に該当するのは海神神社だとされています。しかし、和多都美神社もしくは厳原八幡宮であるという説もあります。
同じ宮司さんが管轄
現在は両神社とも同じ宮司さんが管轄されているようですが、普段は和多都美神社のほうに駐在されているようです。なので、海神神社の手書き御朱印は和多都美神社で頂くことができます。
海神神社と和多都見神社の祭神
海神神社の祭神
主祭神 | トヨタマヒメ(豊玉姫命) Toyotamahime-no-mikoto |
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もともとは木坂八幡宮という神社だったので八幡大神を祀っていたようです。しかし、近代に入って「對馬国一宮和多都美神社」に比定されたことによって、主祭神も上記に置き換えられました。
和多都美神社の祭神
主祭神 | ヒコホホデミ(彦火火出見尊) Hikohohodemi-no-mikoto |
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トヨタマヒメ(豊玉姫命) Toyotamahime-no-mikoto |
ヒコホホデミ(彦火火出見尊)は『海幸彦と山幸彦』神話の山幸彦です。海幸彦の釣針を失くしてしまい、海神であるトヨタマヒコ(豊玉彦命)に相談し、その娘のトヨタマヒメ(豊玉姫命)と結婚するストーリーですね。ちなみに、その夫婦の孫が神武天皇です。
海神神社と和多都見神社を主観的に格付け
由緒
社格
上記は海神神社の社格です。離島の神社としてはかなり高い社格で、限りなく星4に近いです。なお、和多都美神社の近代における社格は村社です。
知名度
アクセス
- 対馬やまねこ空港→和多都美神社まで車で約30分(無料駐車場あり)
- 和多都美神社→海神神社まで車で約30分(無料駐車場あり)
直線距離だと近そうに見えますが、対馬は地形が入り組んでいるため、想像以上に時間を要します。酷道険道というわけではありませんが、急カーブや急勾配が連続するので初見だと運転に疲れます。
スケール
観光
パワー
対馬の地政学
對馬国
対馬島(という表現はあまり見かけませんが)は日本で10番目に大きな島です。現在は長崎県に属していますが、旧国名でいえば『対馬国』です。そのため、佐渡や淡路と同様に一宮神社が存在します。
なお、現代の漢字だと「対馬」ですが、旧字体だと「對馬」です。
1つの島か?
対馬は一見すると南北に細長い1つの島に見えますが、よく見ると中央部のくびれたあたりに海峡らしきものがあり、陸地を南北2つに分断しています。なので、実は2つの島だということになりそうですが…
実は、この海峡は『万関瀬戸』と呼ばれ、近代に入って人為的に開削された運河です。万関瀬戸を挟んで北側を「上島」、南側を「下島」と呼ぶこともあるようです。
いちおう、国土地理院的には1つの島としているようです。ただ、結局のところ「絶対にこれが正解」というのは無いのだと思います。
ちなみに、海神神社と和多都美神社は双方とも上島に鎮座しています。


日本の玄関口
対馬は韓国から近く、古代から朝鮮半島と日本列島を結ぶ海上交通の拠点でした。『魏志倭人伝』にも邪馬台国へのルートとして『對海國』の名が記されていますが、これは対馬のことで間違いないだろうと考えられています。
韓国が見えるかも
天候によっては韓国が見える場所もあります。島の最北端にある韓国展望所が有名で、行きたかったのですが想像以上に時間がかかることが判明し(空港からの目安時間は2時間)、断念しました。地元の方がおっしゃるには、天気が良すぎても悪すぎても見えないようです。
海神神社の近くにある木坂展望台からも韓国の巨済島が見えることがあるそうです。私は展望台のほうには行きませんでしたが、少なくとも神社の本殿付近からは海しか見えませんでした。
和多都美神社
交通
和多都美神社へは『対馬やまねこ空港』から車で30分程度の仁位港の近くにあります。県が管轄する港湾で、ここから空港にほど近い長板浦港へ行くフェリーが1日に1〜2本あります。
車の場合は赤い大鳥居が目印で、そこから仁位港対岸の坂を降りきると左方向に和多都美神社が見えてきます。駐車場は数台停めることができます。


境内
海中鳥居
境内から仁位浅茅湾に向かって鳥居が一直線に並ぶ様子は壮観です。かつて、交易船はこの鳥居を目印に上陸していたのかもしれません。

本殿・拝殿
特筆することはありませんが、流造の質素な社殿です。
龍松
龍松は拝殿の左脇に佇む松の木です。本殿直下に根を張っていることから、そのように呼ばれます。

波良波神社
波良波神社は本殿の脇に佇む摂社です。トヨタマヒメ(豊玉姫命)の父神であるオオワタツミ(大綿津見神)こと、トヨタマヒコ(豊玉彦命)を祀っています。
亀甲石
和多都美神社の宮司家である阿曇氏が代々、亀卜(亀の甲羅による吉凶占い)を行っていた場所です。亀甲石の周りに三柱鳥居が建てられています。
豊玉姫の墳墓
本殿裏手の原生林への入口となっている鳥居をくぐり、少し進んだところにトヨタマヒメ(豊玉姫命)の墳墓と伝えられる磐座があります。




海神神社
交通
海神神社は和多都美神社からさらに車で30分程度の場所にあります。直線距離は近いのですが、道路がリアス式海岸に沿っている為、走行距離はそこそこ長くなります。
集落付近は道の狭い箇所も一部ありますが、他の車と行き違うことも滅多に無いです。神社の近くには大きめの駐車場があるので、安心して大丈夫です。
境内
木坂野鳥の森
境内やその周辺は野鳥の観察スポットとなっています。
長い石段
境内に入ってから本殿へ行くまでに長い石段があります。何段か数えていなかったのですが、結構きつかったです。
そのぶん、景色も良いのですが、ところどころ木々の隙間から海が見える程度です。もう少し手入れすればもっと視界が広がり、展望スポットとして観光客を呼び込めるかと思います。




本殿・拝殿
石段の頂上近くまで来て綺麗な拝殿が見えたとき、登った達成感を得られます。変な意味ではないのですが、離島にもこんなに立派な神社があるのかと素直に感動します。



海神神社・和多都見神社の御朱印
和多都美神社の授与所で海神神社と和多都美神社の手書き御朱印を入手できます。


おまけ
海神神社境内から道路を挟んで向かい側に、広い芝生公園と小屋があります。『木坂の藻小屋』と呼ばれ、藻を刈り取ってそれを畑の肥料とするのに使用されていたようです。
当日、腰痛気味だったので広い芝生に寝転がって空を仰いだところ、珍しい形の雲が見えました。龍神様の横顔みたいに見えます。たまにYoutubeで見かける「この動画を今すぐ再生すれば龍神様のご加護が得られます!!」みたいなやつですね(笑)
それは兎も角、古代人にとって海と空は同一なんですよね。どちらもアメと呼びますから。なので、海の神様と空の神様はイコールだと言っても差し支えないと思います。

