
美保神社
Miho-jinja Shrine
美保神社の予備知識
美保神社は島根半島の東端付近に鎮座する恵比寿神社の総本社です。出雲大社とセットで参拝することが定番とさています。
美保神社の所在地
美保神社の祭神
主祭神 | コトシロヌシ(事代主神) Kotoshironushi-no-Kami |
---|---|
ミホツヒメ(三穂津姫命) Mihotsuhime-no-Mikoto |
コトシロヌシ(事代主神)は出雲大社の主祭神であるオオクニヌシ(大国主神)の息子です。オオクニヌシは大黒神と習合しているのに対して、コトシロヌシはヱビス神(恵比寿神)と習合しています。
また、ミホツヒメ(三穂津姫命)はオオクニヌシの妻です。数多いる妻の中でも、最後の妻とされています。
美保神社を主観的に格付け
由緒
有史以前から存在していたと思われますが、8世紀編纂の『出雲国風土記』にその名が登場します。
社格
美保神社は全国に数多く存在する恵比寿(えびす / ゑびす)神社の総本社です。ただし、恵比寿神社にはコトシロヌシ(事代主)を主祭神とする系統と、ヒルコ(蛭子神)を主祭神とする系統が存在します。美保神社は前者のほうですが、後者の総本社は兵庫県の西宮神社です。
恵比寿は本来、中国もしくはインドからの渡来神ですが、日本神話の神であるコトシロヌシやヒルコにそれぞれ習合したと考えられています。
知名度
一時期、出雲大社との両参りで有名になりました。
アクセス
- JR松江駅またはJR境港駅→バス乗り継ぎ『美保神社前入口』バス停すぐ
バスの運行本数は大体1時間に1本程度です。神社と灯台、双方に立ち寄りたい場合は車がオススメです。
スケール
まあ、普通の有名神社くらいの規模感です。
観光
神社単体では弱いですが、2km先の『美保関灯台』とセットで観光しましょう。同じ島根半島の反対側にある日御碕神社と様相が似ています。
パワー
美保神社の周辺地域
美保関の地政学
東西に長い島根半島は、西端が日御碕と呼ばれるのに対して、東端は美保関と呼ばれます。美保関は行政上は松江市ですが、海峡を挟んで対岸の鳥取県境港市との繋がりが深い地域です。
これらの地域は古くから交易の拠点として栄えました。現代でも境港(さかいこう)は重要港湾の一つで、多くの大型船舶が通行します。
美保関灯台
いったん、美保関漁港と美保神社を通り越して、2kmほど先の『美保関灯台』へと向かいます。日御碕灯台と比べると小ぶりですが、レトロで洒落た建物です。



おっしゃー隠岐の島見えたー!!
と思ったら大山(1,729m)でした。しかし、こうしてみると、島みたいですね。黄砂の影響からか、麓のほうが霞んでいましたが、それが却って神秘的に見えました。
北向きの展望台から隠岐の島も望むことができるようですが、肉眼ではなかなか厳しそうです。
美保関漁港
さて、先ほど通り越した美保関漁港付近へと戻ります。美保神社は漁港エリアの一角にあります。
初訪問時、参拝者専用駐車場が見つからず、漁港沿いの駐車スペースに停めていいか地元の人に聞いてみたところ、あっさりOKしてくださいました。ただ、アクセルとブレーキを踏み間違えたら海へドボンなので気をつけてください。
再訪時にわかったのですが、美保神社の鳥居より100m南の公民館に観光用駐車場があるので、そこに停めるのがオススメです。また、鳥居から漁港沿いに400mほど東へ進んだところにも広い駐車場があります。

青石畳通り
漁港沿いの県道に並行して、青石畳通りという路地があります。もともとは美保神社の参道として江戸時代後期(19世紀)に整備されたものです。
朝早い時間だったせいか活気は感じられませんでした。しかし、これはこれでノスタルジーに浸れそうです。
通りの入口にアニメのキャラが飾ってあります。これは2021年の映画『神在月のこども』(Child of Kamiari Month)のキャラクターです。

美保神社境内
参道


神門
美保神社の神門は出雲大社と同様、左方を上位とした注連縄が飾ってあります。でもなんだか、怪獣が口を開けているようにも見えますよね?(笑)


回廊
神門横の回廊に大鼕と(大きな太鼓)が飾ってあります。美保神社には、これ以外にも多くの楽器が奉納されています。
また、ここから漁港方面を眼下に望むことができます。


本殿・拝殿
美保神社の拝殿は、昭和三年(1928)に造営されました。天井と壁が無く、しかも周囲が山なので、音響効果に優れているそうです。
手前が拝殿で、その奥に本殿が2棟、左右に並んでいます。


本殿配置
配置 | 社殿名 | 祭神 | |
---|---|---|---|
右手 | 左殿 | 大御前 | ミホツヒメ(三穂津姫命) |
左手 | 右殿 | 二御前 | コトシロヌシ(事代主神) |
主祭神を少し深掘り
折角なので美保神社の主祭神コトシロヌシにスポットライトを当てましょう。
オオクニヌシの息子
コトシロヌシ(事代主)は、出雲大社の祭神であるオオクニヌシ(大国主)の息子です。出雲大社と美保神社をセットで参拝することが推奨される所以です。
釣りが好き
コトシロヌシは七福神の恵比寿(エビス / ヱビス)様と習合しているので、外見のイメージもほぼイコールで、釣竿を持って鯛を抱えています。『古事記』ではコトシロヌシが御大御前(美保関)で釣りを楽しんでいる様子が描かれています。
神武天皇の義父
けっこう意外ですが、『日本書紀』によれば、神武天皇の皇后である媛蹈鞴五十鈴媛はコトシロヌシの娘です。おそらく、天皇を出雲王家の母系子孫という設定にする意図でそう書かれたのでしょう。それに、対立王朝との間で政略結婚があったとしても不思議ではありません。
大神神社の祭神とも同一神?
コトシロヌシは恵比寿様だけでなく、大神神社の祭神であるオオモノヌシ(大物主)と同一神扱いされる場合があります。その理由の一つとして、上述の媛蹈鞴五十鈴媛が『古事記』ではオオモノヌシの娘と記述されていることが挙げられます。
一言さんとも同一神?
奈良県にある一言主神社の祭神、ヒトコトヌシ(一言主)もコトシロヌシと同一神扱いされる場合があります。ヒトコトヌシは『一言さん』の愛称で呼ばれる場合もあり、一言だけ願いを聞いてくれる神様です。言われてみれば、なんとなく恵比寿さんとキャラのイメージが被る気がしませんか?
鰐に噛まれる
コトシロヌシがミホツヒメの元へ夜這い中、鰐に手を噛まれた…という言い伝えがあります。ただ、コトシロヌシの別名が『八尋熊鰐』(やひろのくまわに)なので、噛む鰐(かむわに)に掛けたダジャレという説もあります。なお、白兎神社の頁でも紹介した通り、鰐は方言で鮫のことです。
結局何者?
ここからは私個人の考えです。おそらく、オオクニヌシもコトシロヌシも、出雲王朝における実在の役職名で、何人もいたのだと思います。名前からして、オオクニヌシは国王、コトシロヌシは大臣のような役割だと推測できます。
美保神社の御朱印
上手いんだか下手なんだかよくわかりませんが、なぜか神々しくて好きな筆跡です。
