出雲大神宮

出雲大神宮

出雲大神宮 / いずもだいじんぐう
Izumo Dai-Jingū Shrine
丹波に出雲あり!

出雲大神宮に関する予備知識

出雲大神宮は『元出雲もといずも』とも呼ばれる丹波国一宮です。『徒然草つれづれぐさ』にも登場し、近年は最強のパワースポットとして人気を集めています。

出雲大神宮の所在地

京都府亀岡市千歳町千歳出雲
Izumo, Chitose, Chitose-chō, Kameoka city, Kyōto Pref.

出雲大神宮の祭神

主祭神
オオクニヌシ(大国主神)
Ōkuninushi-no-kami
ミホツヒメ(三穂津比売命)
Miho-tsu-hime-no-mikoto

オオクニヌシは日本神話の主役クラスで、出雲大社の主祭神でもあります。一方のミホツヒメはオオクニヌシの妻で、美保神社の主祭神でもあります。

出雲大社との関係

かの有名な島根の出雲大社との関係ですが、両社は完全な別法人です。

出雲大神宮が出雲大社の神を勧請したというのが通説です。『徒然草』にもそのように記されています。しかし、出雲大神宮側は逆の主張をしています。

したがって、両社は「元祖出雲」を主張し合うライバル同士です。かといって仲が悪いわけではなく、色々と協力もしているようです。

出雲大神宮を主観的に格付け

由緒

★★★★☆
創建年不詳

ただし、和銅二年(709)に社殿が造営されたとの記録があります。

社格

★★★☆☆
名神大社丹波国一宮旧国幣中社

名前に『神宮』が付くものの、いわゆる『神宮24社』のカテゴリには含まれません。旧称は『出雲神社』です。また、日本書紀に記される『出雲大神宮』は島根の出雲大社を指すというのが通説です。

知名度

★★★☆☆

徒然草の一節は有名ですが、それが丹波一宮として現存していることはあまり知られていないのではないでしょうか?

アクセス

★★☆☆☆
  • 京都縦貫自動車道『千代川』ICより車で10分弱、大型駐車場あり
  • JR亀岡駅より『亀岡市ふるさとバス』乗車12分、『出雲神社前』バス停下車すぐ

いちおう、バス停がありますが、運行本数は数えるほどしかありません。車以外ならタクシーかレンタサイクルあたりがオススメです。

スケール

★★★☆☆

境内は一宮神社としてはやや小振りですが、ご神体山である御蔭山みかげやままで含めて加点しました。

観光

★★☆☆☆

観光要素に関しては過度に期待しないほうが良いです。

パワー

★★★★★
縁結び商売繁盛

某TV番組で最強クラスのパワスポとして紹介されたことがあります。不謹慎かもしれませんが、出雲大神宮の裏手にある御蔭山の直下あたりは、何度も地震の震源になっています。おそらく、この辺りは磁場の影響で、古来よりパワースポットとして崇敬されていたのではないでしょうか?

出雲大神宮の周辺地域

亀岡市の地政学

山陰の入口

出雲大神宮が鎮座する京都府亀岡市は、京都市の西隣に位置するベッドタウンです。旧国でいえば、丹波たんばの入口に相当し、出雲大社のある出雲いずもと同じく『山陰道』さんいんどうという地方区分です。

また、市の中心部に明智光秀(Akechi-Mitsuhide, 1528-1582)の居城であった丹波亀山城たんばかめやまじょうがあります。古くから交通の要衝であったことが伺えます。

元の名は亀山

そんな亀岡市ですが、実は明治時代(1869)までの地名は『亀山』でした。お城の名前が亀山なのもそのためです。改称された理由は三重県亀山市との重複を避けるためとされています。

亀山の由来については諸説ありますが、自説を述べるとすれば「神山」が由来だと思います。そう考えるようになったきっかけは、私が亀山かめやま」を「神山かみやま」に聞き間違えたことがあるからです。

まあ、発音したのは外国人なんですけどね。でも、古代の日本語は諸外国語と同様、あまり母音をはっきり発音してなかったという説もあります。たとえば「ツキヨミ」が「ツクヨミ」に転訛したりもしていますからね。

それは兎も角、「神山」というのはまさに、出雲大神宮のご神体山である御蔭山みかげやまのことを指しているのではないでしょうか?

ついでに余談ですが、三重県亀山市との関連性について少しだけ面白い事実を発見しました。丹後国一宮である元伊勢籠神社の頁も見てみてください。

丹波の出雲は霧の都

出雲大神宮のピンポイントの住所は『出雲』です。それは島根の出雲大社にあやかった可能性が真っ先に考えられます。

しかし、それ以外の可能性も考えてみましょう。旧丹波国、特にここ亀岡市周辺は霧が頻発する地域として有名です。なので、「雲(霧)が頻繁に出現する場所」という意味でその地名が付けられた可能性も無くはないでしょう。

仮にそうだとすれば、地名としての『出雲』は案外、島根ではなくこちらが起源かもしれません。

いずれにせよ、かつて島根からこの辺りにかけての広い範囲に跨り、一つの強大な国家が支配していた可能性は高いです。

保津川は人工河川?

亀岡市と京都市の間には保津峡ほづきょうという険しい渓谷があり、川下りで有名な保津川ほづがわが流れています。この川について私は長年、疑問に思っていました。

こんな方向に川が流れるのは不自然じゃないか(・・?)

調べてみると、亀岡盆地は古代まで大きな湖だったそうです。しかし、人工的に保津峡を開削したことにより、湖の水が淀川水系へ抜けていったのだそうです。史書には記載がありませんが、複数神社の社伝にそれが記されているようです。

もし仮にそれが事実だとすれば、相当大掛かりな工事です。それを遂行するには、かなりの財力と権力が必要だったはずです。つまり、古代に強大な王権がこの地を支配していたということです。

亀岡駅前

さて、亀岡市内観光の起点になるであろう、JR亀岡駅です。北口ロータリーから出雲大神宮方面行きのバスが発着しています。

ふと、正面の山を見たとき、あれ?と思いました。

山が亀の形に見えね?

もしかすると、『亀山』の由来はこれなのかもしれません。ちょうど、亀の甲羅に相当するのが愛宕山あたごやまです。先述の御蔭山は、亀の右後足あたりだと思われます。

千歳車塚古墳

亀岡盆地の北部、出雲大神宮の500m手前あたりに、『千歳車塚古墳ちとせくるまづかこふん』という前方後円墳があります。6世紀前半頃の築造と推定されていますが、被葬者は不明です。一説では『日本書紀』に登場する倭彦王やまとひこのおおきみとされています。いずれにせよ、この地域の有力者であることは間違いでしょう。もしかすると、保津川開削工事の主導者かもしれません。

出雲大社京都分院

さあ、いよいよ出雲大神宮の境内へ…と言いたいところですが、その前にこちらを紹介させてください。出雲大社京都分院です。

亀岡盆地やJR亀岡駅を挟んで、出雲大神宮と向かい合わせに鎮座しています。こちらは正真正銘、出雲大社の分院です。なので、参拝方法も出雲大社と同じく、四拍手奨励です。

なお、こちらの創建は平成五年(1993)です。あえて亀岡の地を選んだのは、きっと深い意味があってのことでしょう。

あと、出雲大神宮も出雲大社も、社紋が亀甲紋であることを付け加えておきます。

出雲大神宮境内

さて、周辺地域の話が長くなってしまいましたが、境内の案内をしましょう。

千年宮鳥居

千年宮鳥居は府道に面した大鳥居で、平成二十七年(2015)に建立されました。

鳥居横の社名を記した揮毫きごうは、出雲大社の第84代目宮司である千家尊祐せんげたかまさ氏によるものです。両社は別法人であり、お互い「元祖出雲」を主張し合う間柄です。かといって、仲が悪いわけでもなく、むしろ協力関係にあることが伺えます。

表参道

千年宮鳥居をくぐり、表参道を進むと、右手に『国幣中社出雲神社』の社名碑があります。こちらは第81代出雲大社宮司であり政治家でもあった千家尊福せんげたかとみ(1845-1918)の筆です。

その先、一ノ鳥居の手前に『しあわせなでうさぎ』があります。日本神話『因幡の白兎』に登場する白兎神を象ったものです。

本殿・拝殿

出雲大社は四拍手奨励ですが、ここ出雲大神宮は二拍手で良いそうです。裏手にそびえる御蔭山が神々しいです。

白兎像ズ

境内には『しあわせなでうさぎ』以外にも、いくつかの白兎像が安置されています。全部で何体あるかは知りません。以前に参拝した時は無かったような気がします。おそらく、卯年を記念して設置されたのでしょう。

主祭神オオクニヌシ(大国主)と白兎との関係については、白兎神社の記事を参考にしてください。

裏参道

亀岡盆地側、先述の千歳車塚古墳のある方面から来訪する場合は、裏参道を通ることになります。こちらからは御蔭山がよく見えます。

鎮守の杜

拝殿に向かって右手、御蔭山の山裾あたりに『鎮守の杜ちんしゅのもり』があります。このエリアには、滝や磐座など、いわゆるパワースポット的な要素が点在しています。

御蔭山エリア

パワースポットとしての出雲大神宮を語る上で、『鎮守の杜』の奥にある御蔭山みかげやまエリアの紹介は欠かせません。

入山手続き

このエリアに立ち入るには、必ず社務所の受付にて白いたすきを借りて、肩に掛けておく必要があります。また、入山受付は午後3時までです。

注連柱

一の鳥居の右手、もしくは拝殿の右手奥の上り参道を通って、御蔭山へ入山することができます。

入り口に注連柱しめばしらが立っており、ここから先へ立ち入るには入山手続きが必要である旨が記されています。また、ここから先は写真・動画撮影や大声での会話は禁止されています

御蔭山入山

入山と書きましたが、実は山頂まで行くわけではありません。山裾にある『神の磐座いわくら』に参拝するだけです。社殿のすぐ裏手あたりなので、すぐに到着します。ただし、坂が少しきついです。

祭神
クニトコタチ(国常立尊)
Kunitokotachi-no-mikoto

クニトコタチは日本列島を形造ったとされる龍神で、全国の様々な神社で祀られています。太古の昔より、御蔭山にはクニトコタチが鎮座する場所とされています。そのため、現在でもここから先は禁足地となっています。

出雲大神宮と『徒然草』

さて、ここで『徒然草つれづれぐさ』について紹介します。鎌倉時代の有名な随筆なので、学校の授業で習った方も多いかと思いますが、そのワンシーンに、出雲大神宮が登場します。

著者吉田兼好

著者の吉田兼好よしだけんこう(1283?-1352?)は、本名は卜部うらべ兼好かねよしです。由緒ある神社の宮司家の出自であると言われています。なお、最近の教科書では兼好法師けんこうほうしと書かれているようです。

出雲大神宮の登場シーン

徒然草の第236段「丹波に出雲といふ所あり」のくだりに出雲大神宮が登場します。なお、私は古文が苦手科目でしたが、このシーンだけは鮮明に覚えています。

原文対訳

丹波に出雲といふ所あり。

丹波に出雲という所があります。

大社を移して、めでたく造れり。

出雲大社の神を勧請かんじょうして、立派に造営されました。

しだのなにがしとかや、知る所なれば、秋のころ、聖海上人、そのほかも、人あまた誘ひて

しだのなんとかさんが知っている(治めている?)場所なので、秋頃、聖海上人、その他大勢の人を誘って、

「いざたまへ、出雲拝みに。かいもちひ召させん。」とて、

「さぁおいでなさい、出雲参りに。ぼた餅をごちそうしましょう。」と言って、

具しもていきたるに、おのおの拝みて、ゆゆしく信おこしたり。

連れ添って行ったところ、全員礼拝して、大層信仰篤くなりました。

御前なる獅子・狛犬、背きて、後ろさまに立ちたりければ、上人いみじく感じて、

(本殿の)前にある獅子・狛犬が、背を向けて、後ろ向きに立っていたので、上人は只事ではないと感じ、

「あなめでたや。この獅子の立ちやう、いとめづらし。 深き故あらん。」と涙ぐみて、

「なんと素晴らしい。この獅子・狛犬の立ちようは、大変珍しい。(ここは由緒ある神社なので)深い理由があるのでしょう。」と涙ぐんで、

「いかに殿ばら、殊勝のことは御覧じとがめずや。むげなり。」と言へば、

「どうですか、皆さん。素晴らしいものだとお気づきになりませんか。(そんなことも分からないなんて)無教養ですね。」と言ったところ、

おのおの怪しみて、

全員珍しがって、

「まことに他に異なりけり。都のつとに語らん。」 など言ふに、

「本当に他とは違いますね。都の土産(話)として語りましょう。」などと言ってるうちに、

上人なほゆかしがりて、おとなしく物知りぬべき顔したる神官を呼びて、

上人は依然として(理由を)知りたがって、大人びて教養のありそうな風貌の神官を呼んで、

「この御社の獅子の立てられやう、定めてならひあることにはべらん。ちと承らばや。」と言はれければ、

「この神社の獅子の立てられ方は、きっと(特別な)理由のある事であらせられるのでしょう。(その理由を)ちょっとお伺いしたいのですが。」とおっしゃったところ、

「そのことに候ふ。さがなきわらはべどものつかまつりける、奇怪に候ふことなり。」とて、

「そのことですか。分別のない子供たちがやらかしました。けしからん事です。」と言って、

さし寄りて、据ゑ直して去にければ、上人の感涙いたづらになりにけり。

(獅子・狛犬に)近寄って、(元の向きに)据え直して去って行ったので、上人の感涙は無意味になってしまいました。

まとめ

偉いお坊さん「狛犬が背中合わせにたってるんは、きっと深〜いわけがあるんでしょうねえ。ありがたやありがたや」(感涙)

大勢の連れ「ほんまやーすごーい」(感涙)

神官「あーそれ、近所のガキ共のイタズラですから」

一同 ( ゚д゚)

現代でも教養のある人に限って、こういう失敗をしてしまいがちですね。『徒然草』は身分の高い人やインテリ層の失敗談が多く、現代人が読んでもクスッと笑ってしまうシーンが多いです。

それにしても、獅子・狛犬の向きを簡単に変えてしまうって、子供も宮司さんも怪力すぎはしませんかね?

ちなみに、現在の出雲大神宮に設置されている獅子・狛犬は当時のものではないそうです。

きっと、当時は木製だったのでしょう(知らんけど)

出雲大神宮の御朱印

出雲大社京都分院の御朱印もついでに載せておきます。出雲大神宮の御朱印は置き書きなので、正直、コメントのしようがありません。それよりも、出雲大社京都分院の御朱印が「ほのぼの系」で、個人的に高評価です。

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