
駒形神社
Komagata-jinja Shrine
駒形神社の予備知識
駒形神社は岩手県南部に鎮座する陸中国一宮です。山岳信仰をルーツとしており、駒ケ岳が神社名の由来となっています。
駒形神社の所在地
市街地の本社以外に、山裾の里宮と、駒ケ岳(1,130m)山頂の奥宮があります。今回は本社のみを紹介します。
本社
里宮
奥宮
駒形神社の社名由来
奥州市の西部にそびえ立つ駒ケ岳(1,130m)に由来します。別名『駒形山』とも呼ばれ、それが神社名となりました。
群馬県の赤城山連峰に駒ケ岳(1,685m)という山があります。古代において、現在の群馬県や栃木県あたりを支配していた民族が東北地方まで移動した際に、故郷に因んで駒ケ岳と名付けたのではないかと言われています。
駒形神社の祭神
以下の6柱を『駒形大神』と総称し、祀っています。岩木山神社と同様、坂上田村麻呂が東北制圧の暁に、現地人が崇拝していた山岳の神様と日本神話の神様を習合させたと考えられます。
主祭神 | 駒形大神 Komagata-no-Ōkami | アマテラス(天照大神) | 言わずと知れた太陽神 |
---|---|---|---|
アメノトコタチ(天常立尊) | 世界創生神の一柱 | ||
クニノサヅチ(國狭槌尊) | 世界創生神の一柱 | ||
アカツ(吾勝尊) | アマテラスの子、オシホミミ(天忍穂耳尊)と同一神 | ||
オキセ(置瀬尊) | オシホミミの子、ニニギ(瓊瓊杵尊)と同一神 | ||
ヒコホホデミ(彦火火出見尊) | ニニギの子、別名『山幸彦』、神武天皇の祖父 |
駒形神社を主観的に格付け
由緒
諸説あります。岩木山神社と同様、太古の昔から地元民によって山岳の神として崇拝されていたものが、坂上田村麻呂(758-811)の時代に神社化したとするのが妥当な線かと思います。
社格
知名度
同名の神社が随所にあるため、『陸中一宮 駒形神社』と表記して区別する場合が多いです。
アクセス
- JR東北本線『水沢』駅→徒歩10分
- JR新幹線『水沢江刺』駅→車で15分(水沢公園内有料駐車場あり)
スケール
隣接地に大きな公園がありますが、神社自体はそれほど大きな神社という印象を受けません。
観光
一宮巡りという目的以外で、遠方から観光に来ることはまずないでしょう。どうしても、平泉の影に隠れてしまいがちです。
パワー
駒形神社の周辺地域
奥州市の地政学
北東北の玄関口
北上川の水資源と肥沃な土地に恵まれ、古代より文明の発達した地域です。
南北に長い東北地方を北と南に分けるならば、この辺りが「北」の玄関口です。坂上田村麻呂や源義家も、この地域を重要な拠点に位置付けていました。
平成の大合併
奥州市は平成時代(2006)に水沢市と江刺市、その他周辺町村が合併してできた市です。『奥州』という言葉の定義は様々ですが、一般的には東北地方全域を指す呼称なので、かなり違和感があります。新幹線の駅名通り、水沢江刺市で良かったように思うのですが。
市町村合併においては、妥協の産物として無理やり広域地名を引っ張ってくる、いわゆる「僭称地名」が生まれやすいです。
奥州の中心地
とはいえ、この辺りは隣の平泉町と並んで、古代から中世にかけて、奥州の政治の中心だった地域です。市内には胆沢城跡や黒石寺といった史跡も点在しています。なので、あながち僭称とも言い切れないのかもしれません。
ディスってしまいましたが、付け加えると、大谷翔平選手の出身地でもあります。
宮前通り
JR水沢駅の西口から約400m、少し大きいめの商業施設のある交差点を左へ曲がり、そのまま真っ直ぐ進むと、駒形神社の鳥居が見えてきます。
この通りは『宮前通り』と呼ばれるようです。「宮」とは勿論、駒形神社のことでしょう。

駒形神社境内・水沢公園
駒形神社は水沢公園という大きな公園に隣接しています。駐車場も水沢公園にあるため、水沢公園と併せて紹介します。
神門
神門の周りを杉か檜かの巨木が取り囲んでいる様は、一宮神社ではよくある光景です。

本殿・拝殿
神門をくぐれば、すぐに本殿・拝殿があります。

境内社
山神社
本殿の右手にある小さな末社です。その名の通り、山の神様であるオオヤマツミ(大山祇神)と、サクヤヒメ(木花咲耶姫)を祀っています。
鹽竈神社
鹽竈神社は山神社のもう一つ右手にあります。もともと駒形神社とは別神社でしたが、江戸時代末期から明治時代にかけてのゴタゴタで、同じ場所に収まったようです。
社名・社格 | 鹽竈神社 | 駒形神社の別宮 |
---|---|---|
祭神 | 鹽竈神 | シオツチオジ(塩土老翁) |
タケミカヅチ(武甕槌神) | ||
フツヌシ(経津主神) | ||
相殿 | 春日神 | アメノコヤネ(天児屋尊) |
ヒメ神(比売神) | ||
藤原鎌足(614-669) |
シオツチオジ(塩土老翁)はあまり聞き慣れない名前ですが、潮流や航海、漁業や製塩法の神様と言われています。武道の神であるタケミカヅチやフツヌシと共に、鹽竈大神として崇められています。
シオツチオジ以外は藤原氏の氏神で固められています。おそらく、奥州藤原氏が関係していると思われますが、そのあたりは宮城県の鹽竈神社を参拝した際に掘り下げてみたいと思います。
水沢招魂社
水沢招魂社は鹽竈神社に向かって右手にあります。明治四十二年(1909)創建で、水沢地区における国事殉難者の英霊を祀っています。


水沢公園
駒形神社の鳥居
駒形神社の鳥居は水沢公園側にもあります。一宮神社としては小振りな神社ですが、公園の緑と調和していて優雅な佇まいを見せてくれます。


桜の名所
すごく綺麗な公園です。500本以上の桜のほか、チューリップやツツジも咲き誇っています。
後藤新平像
園内には、日本ボーイスカウトの創始者である後藤新平(Gotō-Shinpei, 1857-1929)の立像があります。彼は医師でもあり政治家でもありました。
斎藤實像
二・二六事件の凶弾に倒れた政治家、斎藤実(Saitō-Makoto, 1858-1936)の像もあります。後藤新平、高野長英と並び、水沢三偉人の一人に数えられています。



御朱印
左上のスタンプは、かつて水沢公園の隣接地に競馬場があったことに因んだものだと思われます。
