
熊野那智大社
くまのなちたいしゃ
Kumano-Nachi-Taisha Grand Shrine
熊野那智大社の予備知識
熊野那智大社は熊野三山の一角で、落差日本一を誇る『那智の滝』を擁します。そのため、観光地・パワースポットとして高い人気を誇ります。
熊野那智大社の所在地
熊野那智大社の祭神
主祭神 | フスミ(熊野夫須美大神) Kumano-Fusumi-no-Ōkami |
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イザナミ(伊弉冉尊)と同一神とされ、熊野権現の1柱でもあります。「フスミ」と「ムスビ」はどちらかが転訛したものと考えられます。
熊野那智大社を主観的に格付け
由緒
上記創建年は社殿が現在の場所に移設された年です。第16代仁徳天皇の時代と伝えられていますが、実年代は不詳で、おそらく4-5世紀頃と考えられています。
もともと、初代天皇である神武天皇が東征の際(紀元前7世紀?)、滝をオオナムチ(大己貴神)の化身として崇めたのが起源とされています。
また、第5代孝昭天皇の時代(実年代不詳)にインドからの渡来僧により創建されたという説も存在します。
社格
平安時代の『延喜式』に記された『式内社』でないのが意外です。もしかすると、当時における「神社」の概念とは一線を画する存在だったのかもしれません。
知名度
滝と塔のツーショットは有名ですが、神社としての知名度はそこまで高くないかもしれません。
アクセス
那智勝浦町自体が大都市圏から遠いです。ただし、町の中心部からのアクセスは悪くありません。
- JR紀伊勝浦駅からタクシーで約15分
- JR紀伊勝浦駅からバスで約30分『那智山』バス停下車
- 新宮市中心部から車で30分弱
スケール
那智大社の境内単体だとそれほど広くはありませんが、隣接する青岸渡寺や那智大滝も事実上、那智大社の一部のようなものです。
観光
観光地としても抜群です。
パワー
神社のご利益だけでなく、マイナスイオン効果も凄そうです。
熊野三山相互リンク
熊野那智大社は本宮大社や速玉大社と共に熊野三山の一角で、なおかつ熊野古道の構成要素として世界文化遺産にも登録されています。
熊野那智大社の周辺地域
那智勝浦町は紀伊半島南端部に位置し、大阪や名古屋から特急列車で4時間近くかかります。車の場合だと、最近は高速道路が部分的に開通しているので3時間強で到達可能ですが、遠いことに変わりはありません。
ただし、町の中心部から熊野那智大社までは距離が近く、道も綺麗に整備されています。
熊野古道『大門坂』
山上にある那智山観光センターや飛瀧神社付近の駐車場まで車で行くことが多いでしょう。でも、あえて麓の大門坂駐車場に車を停めて、『大門坂』を歩いて登っていくルートがオススメです。
なぜなら、大門坂は熊野古道の1ルートである中辺路の一部で、熊野古道の初級者ルートとなっているからです。熊野古道を全ルート制覇する時間や体力がある人はそういないでしょう。でも、ここなら熊野古道歩きを手軽に体験できます。

那智山観光センター
さて、大門坂の石段を登り切ると、那智山観光センター付近に到達します。実はここからの見晴らしが良く、山々に霧がかかって神々しさを演出してくれていました。
那智山観光センターのすぐ近くに那智山郵便局があります。その隣の石段が那智大社の表参道となっています。


熊野那智大社境内
表参道の石段を登り鳥居を2つくぐれば、いよいよ那智大社の境内です。


熊野那智大社の礼殿と御社殿
境内の一番大きな建物が礼殿です。その先に御社殿が6棟、平行に配置されていますが、参拝は礼殿1箇所でおこないます。なので、本宮大社や速玉大社と違って、参拝順を意識する必要はありません。

上五社の御社殿・祭神
まず、第一殿から第五殿までを『上五社』と呼びます。
主祭神のフスミ(熊野夫須美大神)は鈴門正面、最も大きな社殿である第四殿に祀られています。
また、向かって右端の第一殿にはオオクニヌシと同一神とされるオオナムチ(大己貴神)が祀られています。オオナムチは滝の化身としても扱われ、『飛瀧権現』と呼ばれます。
社殿配置 | 社殿名 | 祭神《本地仏》 | ||
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右端 | 第一殿 | 瀧宮 | オオナムチ(大己貴神) | オオクニヌシ(大国主)と同一神《千手観音》 |
右から2 | 第二殿 | 證証殿 | ケツミミコ(家津美御子大神) | スサノオ(素戔嗚尊)と同一神 《阿弥陀如来》 |
クニトコタチ(国常立尊) | 日本列島を形成した龍神 | |||
右から3 | 第三殿 | 中御前 | ハヤタマオ(熊野速玉大神) | イザナギ(伊弉諾尊)と同一神 《薬師如来》 |
右から4 | 第四殿 | 西御前 | フスミ(熊野夫須美大神) | イザナミ(伊弉冉尊)と同一神 《千手観音》 |
右から5 | 第五殿 | 若宮 | アマテラス(天照大神) | 言わずと知れた太陽神 《十一面観音》 |
中四社・下四社の御社殿・祭神
また、第六殿(八社殿)には『中四社』と『下四社』が全て収められています。
『中四社』に天孫系の神々が祀られ、『下四社』には大地創成系の神々が祀られています。天孫系と大地創成系の神々を総称して天神地祗と呼ぶ場合もあります。
社殿配置 | 社殿名 | 祭神《本地仏》 | ||
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左端 | 第六殿 (八社殿) | 禅児宮 | オシホミミ(忍穂耳命) | アマテラスの息子 《地蔵菩薩》 |
聖宮 | ニニギ(瓊々杵尊) | オシホミミの息子 《龍樹菩薩》 | ||
児宮 | ヒコホホデミ(彦火火出見尊) | ニニギの息子『山幸彦』 《如意輪観音》 | ||
子守宮 | ウガヤフキアエズ(鵜葺草葺不合命) | ヒコホホデミの息子、神武天皇の父 《聖観音》 | ||
一万宮・十万宮 | クニサツチ(国狭槌尊) | 土の神 《文殊菩薩》 | ||
トヨクモノ(豊斟渟尊) | 雲の神 《普賢菩薩》 | |||
米持金剛 | ウヒヂニ(泥土煮尊) | 泥土を司る神 《釈迦如来》 | ||
飛行夜叉 | オオトノヂ(大戸道尊) | 泥土を固めた神 《不動明王》 | ||
勧請十五所 | オモダル(面足尊) | 人体を司る神 《多聞天》 |
御縣彦社
礼殿の左手前に摂社の『御縣彦社』があります。祭神は本宮大社や速玉大社でも登場した八咫烏です。八咫烏は上賀茂神社・下鴨神社の主祭神であるカモタケツノミ(賀茂建角身命)と同一神とされています。
社名 | 御縣彦社 Miagatahiko-sha | 那智大社の境内摂社 |
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祭神 | 八咫烏 Yatagarasu | カモタケツノミ(賀茂建角身命)と同一神 |
楠霊社
楠霊社とは礼殿の右手にある大きなクスノキのことです。なんと、平重盛(1138-1179)により植樹されたものだそうです。たしかに、平家の方々は熊野詣でが好きでしたね。

青岸渡寺
さて、那智大社の参拝を終えたら、礼殿の右手背後に鎮座する『青岸渡寺』へ向かいましょう。なお、青岸渡寺は天台宗の寺院ですが、神仏習合が盛んだった中世は、ここも那智大社の一部だったと思われます。
…と思った矢先に、滝が見えてきます。ここにきてようやく、滝の轟音であったことに気付かされます。


大黒様と三重塔
青岸渡寺から石段を降りたところに大黒天の像があります。大黒天のルーツはインドのマハーカーラ(Mahākāla, महाकाल)なのですが、日本神話の神であるオオクニヌシ(大国主)と習合しています。
また、オオクニヌシはオオナムチと同一神とされており、先述の通りオオナムチは滝の化身とされています。
その大黒天像に向かって左手に三重塔があります。塔と滝のツーショットは那智大社の象徴とも言うべき光景ですが、塔自体は青岸渡寺に所属しています。

飛瀧神社
さて、三重塔付近から坂を降りていけば、いよいよ『飛瀧神社』です。飛瀧神社は那智大社の別宮であり、『那智の滝』を間近で見られる絶景スポットなので、忘れずに参拝しましょう。


御瀧拝所
参入料:300円(1人)
滝をさらに間近で見たい場合は参入料を払って、授与所より先の御瀧拝所へ進みましょう。マイナスイオンで身も心も清められます。ただし悪天候時は足元のぬかるみに注意しましょう。
滝の落差は133mで、1段の滝としての落差は日本一です。



御朱印
熊野那智大社と御縣彦社
那智大社と御縣彦社の御朱印は那智大社の授与所で貰えます。


飛瀧神社
飛瀧神社の御朱印は飛瀧神社の授与所で貰えます。どちらもかっこ良くてお気に入りなのですが、特に左のほうは私の中で一位二位を争うレベルです。


おまけ
那智山観光センターで見かけた熊野三山の萌えキャラを紹介(写真の左から順に):
速玉大社の境内にある梛の木が由来。
那智大社の周辺、那智山や那智の滝にかかる霧が由来。
本宮大社にまつわる昔話のヒロイン、照手姫が由来。
3人とも八咫烏を従えているのが可愛らしです。八頭身バージョンもあるので是非チェックしてみてほしいです。
