
北陸新幹線舞鶴ルートはワンチャンありかも
北陸新幹線の敦賀以南のルートについての議論は依然として混迷を極めており(2025年3月現在)、未だ着工には至っていません。国は「小浜ルートで確定」とし、それなりに詳細なルート案も提示されましたが、本当にそのルートで着工できるのか疑わしい状況です。
当記事では、京都市内を縦貫しないルートや、すでに不採用になったと思われる舞鶴ルートついて、山陰新幹線構想も絡めて検証してみたいと思います。
純粋な小浜ルートをおさらい
まず、国が推し進めようとしている『純・小浜ルート』について、ざっくり紹介しておきます。なお、詳細については他のサイトや各種メディアで紹介されていますので、そちらをご参照ください。
予定ルート
小浜〜京都市内
現在の東小浜駅付近に駅ができると想定されています。その先はほぼ真南へと進路を変え、標高800m級の山々が連なる丹波山地を通って京都市内を目指します。
途中、茅葺屋根の集落で有名な南丹市美山地区をかすめます。その少し上流域にあたる『芦生の森』と呼ばれる原生林をトンネルが貫くことになります。川の水への影響や工事車両の通行等から、美山地区からは既に反対の声が挙がっています。
環境問題もさることながら、トンネルの距離が半端ないので、工事には相当な費用と時間がかかりそうです。
京都市内(京都盆地)
京都市内に入っても地上には出ません。京都盆地の大深度地下を縦貫し、駅も地下深くに設置されます。駅の候補地は京都駅もしくは桂川駅です。なお、私個人的には桂川駅を推していて、以前にその記事をUPしました。
なお、京都盆地の地下には大量の地下水が眠っています。その量はなんと、琵琶湖に匹敵するほどの水量だそうです。地下水は酒造業界のみならず京都の地場産業には密接な繋がりがあり、当然ながら反対の声が挙がっています。
京都市内〜松井山手
京都市内の駅を出た後は京都盆地を南下し、巨椋池跡地付近に車両基地が設けられるとのことです。さすがにこのあたりは地上に出ると思われます。
その後は第二京阪道路に沿うルートでJR学研都市線松井山手駅を目指します。松井山手駅は在来線ホームよりも地下深くに新幹線駅が設置される予定です。
松井山手〜新大阪
松井山手駅からは進路を西へ転換し、新大阪を目指します。大阪盆地はほとんどが市街地なので、やはり大深度地下トンネルを通すことになります。新大阪駅も地下深くを東西方向にホームが設置される予定です。
ルートに対する率直な思い
上記の予定ルートに対して思うことを率直に述べます。
・・・無理やろ(^_^;)
いや、もちろん物理的には可能だと思いますよ。やろうと思えば。けれども、費用と時間がいくらかかるのかっていう話。建設費だけでなく維持費もかかりそうですし、地下水への影響はありませんなんてどうやって証明しますか? 何かが存在しないことを証明するのって、存在することを証明するよりも遥かに難しいのですよ。そんなことしてたら百年経っても開通しないでしょう。
私案ルート
純小浜ルートなんて無理ゲーですという話をしたところで、私案ルートを2つ紹介します。あくまで私案です。新幹線の建設維持コストや自然環境に関する専門知識を持ち合わせていない素人の意見ですので、肩の力を抜いてご覧ください(笑) また、駅名も当サイトでの仮称ですのであらかじめご了承ください。
私案ルートA
まずA案から紹介します。
青い線が北陸新幹線のルート案、緑の線が山陰新幹線のルート案です。いきなり山陰の話が出て混乱されるかもしれませんが、まずは青い線だけを上から追っていきましょう。
小浜〜園部
小浜を出たあと丹波山地の山々をトンネルで縦貫するという点において純小浜ルートと同じです。異なるのは京都市内へ向かうのではなく、市内より西北の園部駅付近へと向かいます。
例の美山地区の上流ではなく下流を経由することになるので、環境への影響は多少なりとも小さいのではないかと思います。
なぜ園部かというと、在来線の京都近郊区間の終着駅であると同時に、南丹市や京丹波町だけでなく丹波篠山市あたりも利用圏として見込まれる為です。
園部で分岐!!
園部から南に関してですが、ここから大阪方面行きと京都(市内)方面行きに分岐します。大阪方面行きは北陸新幹線、京都方面行きは山陰新幹線のスキームで建設します。もちろん、両者は相互直通です。
はい、色々とツッコミどころがあるのはわかります
けれども、京都にも新幹線の終着駅があって然るべきだと私は思います。大きなキャリーバッグを持った大勢の観光客が途中駅で乗降してくるのは非効率ではないですか? 東海道新幹線は兎も角、北陸新幹線くらい大阪方面と京都方面に分岐したって構わないと思うのですが。
園部〜新大阪
園部以南は能勢町あたりを経由して大阪市内を目指しますが、途中の千里中央にも駅を設けます。御堂筋線の延伸で衰退傾向にある千里中央が北大阪の拠点駅として再興できます。モノレールで数駅の伊丹空港へのアクセスにも便利です。
千里中央から先は北大阪急行に沿って南下します。可能であれば、地下より高架のほうが良いですね。さらに可能であればですが、新大阪よりも大阪駅を終着駅にできれば理想です。
園部〜新京都
一方、園部から京都方面へは京都縦貫自動車道に近いルートで、山陰新幹線の一部として建設します。途中、通勤用途で亀岡市の平和台公園あたりに駅を設けるのはありだと思います。
そして、桂川駅を「新京都駅」とし、地上駅として建設します。ここを終着駅としても良いかと思いますが、どうしても京都駅まで欲しいという話なら、地上ルートで京都駅を目指します。
え、松井山手? 在来線を作りましょう!
A案の特長
このルートの最大のメリットは北陸〜大阪間をほぼ最短&最速で移動できることです。北陸〜京都だと若干遠回りですがが、それでも米原ルートと大して変わりません。敦賀〜京都間は現行の60分から40分程度に短縮され(ノンストップならもっとかな)、しかも乗換えが不要になります。
また、京都府北部地域の人も新小浜駅を利用することが想定されます。そのため、新小浜駅に停車する速達列車の割合が高くなり、小浜への恩恵が大きいと言えます。
ただ、丹波山地を長大トンネルで縦貫しないといけないという点では純小浜ルートと変わりません。なんだかんだで建設にも維持にもコストがかかりそうですし、環境への影響は未知数です。また、京都府内を走行する距離が長い割に、京都府北部地域への恩恵は限定的だと言えます。
私案ルートB
次にB案を紹介します。
お待ちかねの舞鶴ルートです。今度は下から見ていきましょう。
新大阪&新京都〜園部
園部より下はA案と同じです。大阪発着便と京都発着便が園部で分岐または合流します。
園部〜綾部
園部の次は綾部を目指します。京都縦貫自動車道に沿うルートなので、純小浜ルートほどの長大トンネルは必要ありません。地上の景色もそれなりに楽しめるはずです。
駅は綾部IC近くに作るほうが距離や費用を節約できそうですが、敢えて綾部駅に併設します。なぜなら、綾部駅は「新福知山駅」としての役割を担う必要がある為です。福知山市は関西地方北部最大のハブ都市であり、なおかつ福知山駅〜綾部駅は線型の良い複線です。利用者は福知山市や綾部市だけでなく、兵庫県の丹波市や朝来市も想定されます。
ここで山陰新幹線と北陸新幹線に分岐しても良いのですが、敢えて次の舞鶴まで持ち越します。
綾部〜新舞鶴
西舞鶴駅付近に「新舞鶴」駅を設置します。もし西舞鶴駅を新舞鶴駅に改称するなら、東舞鶴駅を舞鶴駅にするのが良いでしょう。
それは兎も角として、ここ新舞鶴を山陰新幹線と北陸新幹線の分岐駅とします。結節点なので多くの速達列車が停車し、舞鶴は大きな恩恵を得られるでしょう。大阪や京都市内まで「こだま」タイプでも40分程度でアクセスできるようになるはずです。
また、両線を繋ぐ短絡線も建設すれば、東京や北陸から山陰へスイッチバックせずに直通する列車を走らせることも可能です。 もし新幹線での貨物輸送が実現すれば、舞鶴港との連携も図れそうです。環日本海の新たな交流軸が生まれるでしょう!
新舞鶴〜新小浜
舞鶴から小浜まではなるべく若狭湾や三方湖が見えるルートで進みます。もちろん、トンネルはそれなりにあるでしょうけど、丹波山地の長大トンネルに比べたら大したことないはずです。
ただ、このルートだと新小浜駅の利用者が小浜市周辺に限定されるため、大半の速達列車が通過してしまうことになるでしょう。しかし、それでも大阪や京都まで1時間以内にアクセスできるようになり、通勤も夢ではなくなります。
B案の特長
このルートのメリットは京都府北部地域への恩恵が大きいことに加え、山陰新幹線建設を兼ねることができるという点です。というより、このルートが実現しなければ山陰新幹線が実現する可能性はほぼゼロになるのではないでしょうか。過疎化に悩む京都府北部や山陰地方の救世主となり得ます。
A案に比べると遠回り感は否めませんが、敦賀〜新大阪でいえば米原ルートと大して変わりません。敦賀〜京都だとかなり遠回りで、途中駅ノンストップだとしても時間短縮はせいぜい5-10分程度だと思われます。しかし、それでも乗換えの手間と乗換時間8分が帳消しになるので、その効果は大きいでしょう。
B案の場合、距離が長くなっても地上区間の比率が高いのが嬉しいです。多少時間がかかっても、地上の景色を見られるほうが精神的には短く感じるものです。Wi-Fiだって繋がりやすいでしょうし。
遠回りで運賃が割高になるのが不満であれば、敦賀で新快速に乗り換えてのんびりと琵琶湖を眺めるのも良いと思います。まさかこのルートで湖西線の3セク化は無いと思いますよ。
でもこのルートだと山陰本線の綾部以南と舞鶴線、それに小浜線は全線3セク化でしょうね。それでも、沿線自治体に多大なメリットをもたらすルートだと言えるのではないでしょうか。
総括
結局のところB案すなわち舞鶴ルート推しということになります。あくまで山陰新幹線に絡めることと、A案と同様に大阪方面と京都方面に分岐することとが前提条件になります。
分岐に関しては色々と突っ込まれそうです。けれども、大深度地下で京都市内から松井山手を経由して新大阪までなんていう無理ゲーと比べたらよほど現実的じゃないですか? それに、分岐して東西方向に結べば、京都市内の駅だって地上に建設できるのではないでしょうか。
あと、山陰新幹線なんて不要だろという意見も出そうですが、私は必要だと考えています。福井や鳥取から大阪や京都に通勤するような未来を思い描くことが大事です。人口が減る地域に投資するなんて無駄だという発想では、日本全体が沈んでしまいます。
というわけで、新幹線シリーズの次回は山陰新幹線の記事にしたいと思います。今回は鳥取までしか表示していませんが、次回は少なくとも松江までは延伸しますよ! …さすがにその先は悩みそうですけどね(笑)
ちなみに、サムネの画像は五老スカイタワーから舞鶴港方面を撮ったものです。眺望の素晴らしい場所なので、是非いちど訪れてみてください。